Wednesday, July 9, 2008

REVIEW: SONIC YOUTH




 「River to River Festival」。これは毎年夏シーズン中マンハッタン島ダウンタウン地区で3ヶ月間毎週、様々なバンドによる無料のライブが繰り広げられるいわゆる夏フェス。昨年もアニマル•コレクティブ、バトルス、といったバンドが出演し大盛り上がりを見せていた。
 歴史をたどれば同フェスが誕生したのは02年。きっかけは9/11、同時多発テロで沈没したロウアーマンハッタンをアートの力で息を吹き返させる、といった主旨で始められたという。西はハドソン川、東はイーストリバーに囲まれるダウンタウンエリア内で開かれる、というのが名前の由来。
 昨年も、70年代に活躍したロウアーイーストサイド出身の伝説「SUICIDE」が出演するなど、同フェスにはコアなファンも多く集まり人気を誇っていたが、06、07年ともに期間内で一番注目される7月4日、独立記念日の出演アーティストがスコットランドのベル&セバスチャン、カナダのニューポルノグラファーズという外国勢であったなど、その主旨に対する異議も多くのメディアで唱えられていた。
 しかし、ニューヨーク市出身のオルタナティブ/ノイズ音楽シーンの重鎮ソニックユースの出演で決まった今年の記念日は、無料にも関わらずこの日だけはチケット制が設けられ、予約開始後数日でソールドアウト(?)になる異例な出来事となった。
 
 キム•ゴードン(Vo./Ba)は「X-girl」のデザイナーとしても有名で、今年2月にはマーク•ジェイコブスのショウでも彼らの演奏が大々的にフィーチャーされるなど、何かと音楽外の話題も多い無冠の帝王ソニックユースだが、おぉ、始まれば何のその。ノイズという音の洪水、最近ではすっかり鳴りを潜めているように見えるニューヨークアンダーグラウンドシーンの健在ぶりを見せつけられたような気がした。
 今年はソロでも傑作「TREES OUTSIDE ACADEMY」を産み出したサーストン•ムーア(Vo./Gt.)は今年でなんと50歳。最近でも「NO WAVE: POST PUNK. NEW YORK UNDERGROUND 1976-1980」の著作を記念し、トライベッカにてリディア•ランチを招待、「TEENAGE JESUS & JERKS」の再結成ライブを率先して実現するなど、相変わらずの社会貢献を果たしている。そう、ニルヴァーナもダイナソージュニアもソニックユースが見初めた、というのも有名な話。
 この日はもちろん、Tシャツに短パンといった出で立ちのMR. マーク•ジェイコブスも客席に紛れ込んでいました。客席には、マーク•ジェイコブスブランドのソニックユースTシャツを着たファン、もろグランジなネルシャツ/ロン毛の白人族もちらほら。モッシュもダイブするのも良し、ノイズに揺れるのも良し。選曲も名盤「DAYDREAM NATION」や「GOO」、「DIRTY」からも多数演奏するなど、盛り上がらないわけがない。締めは「100%」。めちゃくちゃ盛り上がった。リー•ラナルド(Vo./Gt.)のポエトリーにもしびれた。でもとにかく、その他に類を見ないノイズ天国にぶちのめされた。
 
 その晩、独立記念日を祝し打ち上げられた花火の退屈さに寓の根を言うまでもなく、全くいつまでこうやって上の世代に踊らされる日が続くのだろうと、友人宅の屋上にてふと疑問に思った。確かにソニックユースは最高にかっこよかった。でもどうせならもっと自分の同世代による最高にかっこよい音楽に共鳴したい。見せかけのスタイルなんて打ちのめすぐらい強烈な同世代の出現に刺激を受けたい。「〜のリミックス聴いた?」だとか、「あのプロモまじでヤバいよ」だとかそんな話がしたいんじゃなくて、もっと近い物同士が刺激しあえる環境にいたい。芸術を着飾らずに直視するのが当たり前な時代じゃなきゃどう考えても面白くない。そう、誰もが知っている単語の羅列みたいになってしまっているこんなクソみたいな20世紀的レビューじゃなくて、感嘆符と形容詞ばっかりですっかり埋まってしまうような、そんな感動を素直に表現できる正直な環境が欲しい。どこそこのレコードレーベルだとか、〜とのコラボだとか、そんな格好付けた表現も出来ないようなライター泣かせの世界で生きてみたい。

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